人生の見積もりの難しさ

 人はどうしたって正確に自分の「人生の見積もり」を立てることが苦手だ。自分にもつかめると思えた幸せや理想。でも、ある日突然、まったく予想しないかたちで、育児の孤立や生活不安、病気や障害など多種多様な困難に直面し、打ちのめされてしまう。人生の見積もりは思ったよりも上手にはできない。だからこそ、家庭や職場以外に、“かけがえがない”と感じられる場所があったら、ほっと一息つけるし、前向きに生きる頼りにもなる。ただ、そんな場所は決して多くはない。

久留米という町に息づく本業+α

 日本の商店は1982年の172万軒をピークに減り続け、2016年には135万軒に低下している。これから小さなお店はもっと少なくなるだろう。経営悪化から、店主の高齢化、後継者問題、大規模店舗やチェーン店の増加、ネット通販の伸長、原因はさまざまだ。ただ、こうした厳しい環境の中でも、育児に悩む母親を応援したり、もしかしたら孤独や困難を抱えているかもしれないお客さんの悩みに寄り添ったりする商店が久留米にはある。それが「本業+α」のお店だ。

自宅開放型パン教室「Peek a boo!(ピーカープー)」。講師の自を開放したアットホームな雰囲気の中で、親子関係のメンタルケアにもつながる居場所にもなっている。

お店とお客さんの「プラス」のコール&レスポンス

 本業+αは、“本業”である商売を営みながら、お客さんにとって何が必要かを考え、寄り添い、さらに踏み込んだアクションをプラスして行うお店のことである。たとえば、“常連のお客さんが突然の病になったときに人生の最期を看取る美容サロン”、“常連さんや近隣住民の郵送物の預かりから、子どもの見守りまでを引き受ける老舗久留米絣専門店”、など、その+αの内容はお店ごとに千差万別だ。しかし、お客さんはそんな独特な雰囲気を感じ取り、愛着や頼を覚え、この場所を支えたい、自分でも何か応えたいと感じるようになる。このことは、まるで音楽におけるコール&レスポンス(掛け合い)のようで、お店とお客さんが、新たな関係性とかけがえのない場所を共に創り出していく。

 2020年、久留米にある本業+αのお店を探し、ネットワーキングするプロジェクトが始まった。「自分の居場所」と感じる場所、「人生の見積もり」の上手くいかなさを共に乗り越えるお店とお客さんとの関係、それらはわたしたちのプラスのアクションで作っていける。